旅のエッセイ

オールドダッカにある老舗「Haji biryani」。ダッカで「今まで食べたなかでいちばんおいしいビリヤニ」にありつけるとは思いもよらず。

エネルギーぎゅうぎゅうのダッカの街でおいしいと評判のビリヤニ。わたしは勝手に、いろんなスパイスにまみれたパラパラのお米にお肉どーん!な、エッジの効いたビリヤニが出てくると想像していた。この街を体現しているような、張り合えるような力強いビリヤニを。

ところがハジ・ビリヤニのビリヤニはしっとり・あっさり。くさみもなし。驚くほど食べやすく、なによりとてもおいしい。ライムを絞ると味がキリリと引き締まってまたおいしい。拍子抜け。

食べ始め、周りの人たちが食べる手を止めて、じぃっとわたしを見る。ここで言う手は「スプーンを持つ手」ではなく素手の「手」。こんなときはいつも試されているような気持ちになるし、ガッカリされたくない気持ちが働く。わたしもスプーンは手にせず素手で食べ始める。周りの人はそれを見て食事に戻る。彼らがなにをどう思ったかはうかがい知れないけれど、手で食べるほうがおいしいことは知ってるぞ。

おいしいハジ・ビリヤニには、なんとwikipediaにページがあった。「レシピ」に書かれている部分が興味深い。

The recipe includes highly seasoned rice, chevon, mustard oil, garlic, onion, black pepper, saffron, clove, cardamom, cinnamon, salt, lemon, doi (yogurt), peanuts, cream, raisin and small amount of cheese (either cow or buffalo). The recipe has been handed over the founder of the restaurant to his next generation. Haji Mohammad Shahed claimed that, “I have never changed anything, not even the amount of salt”

スパイスそんなもんなのか。どうりであっさり。2代目の息子が「塩の分量すら変えていない」と先代のレシピそのままにお店を続けているだなんて、なかなかに硬派。引用部分の出典元がNew York Timesなので海外でも知られるほんとに有名なお店なんだなあ。

などふんふん読みながら、なんてったっていちばんの驚きは、このwikipediaを読むまでずっと羊肉だと思っていたお肉が山羊肉だったこと。山羊肉ってもっとクセがあるかと思っていた。もー、ぜんぜん!

釜むっちゃでかい

ダッカの街からは想像できなかった口当たりのいいビリヤニに拍手。

書籍『旅をひとさじ—てくてくラーハ日記—』書影

選りすぐりの写真とエッセイを収録!

書籍『旅をひとさじ—てくてくラーハ日記—』松本智秋 著

A5判並製・コデックス装・フルカラー・144頁
定価:本体1800円+税

書籍紹介へ