旅のエッセイ

「おいしい食べ方」で書いたような食事の機会はそんなにはないので、ひとり旅の基本はやっぱりひとりごはん。しかし中国(や東南アジア)でのそれは一切困らない。むしろひとりでもむちゃくちゃたのしめる。いちばんの理由は麺料理の豊富さ。最適な一皿のポーションもありがたい。よく考えると麺料理の基本の分量って一人前だもんね。

米より麺。断然、麺。

という麺好きなわたしが中国で食べた麺の数はなかなかのもの。だけどおいしくなかった麺は2つくらい。すべてが絶品ではなくて「安価でそこそこおいしい」というのがいい。「まあ麺食べておけば大外れはしないだろう」という食への安心感は、旅において絶大なお守り。

米線(ミーシェン)。八角のきいたお肉とミントの相性◎
汁そばの誘惑を振り切り注文した汁なし担仔麺的なやつ
きちんとスープがついてきてうれしい
ふらっと入った小さなお店でこのレベル!と感激しちゃう

ああ、たった2枚投稿しただけでそわそわする(食べたくて)。

この担仔麺的なやつはわりと食べる機会が多かった。安くておいしい。四川省チベット人自治州では標高が高くて寒いうえに、そもそもが熱々じゃないから「土鍋ほにゃほにゃ」で注文するのにハマった(平地の街では別にハマらなかった)。丼・器で提供される麺よりも保温時間が長いし、標高4000mあたりの土地ではふはふ食べるあのおいしさは格別。

名のとおり土鍋。これを味わうと「あしたはなんの麺にしようか」から
「あしたはなにを土鍋で食べようか」になる。中毒性高い

そうそう、ムスリムがやってるお店もおすすめ。看板に必ず「清真」の文字があるのですぐわかる。たいていのお店は日本でいま流行っている蘭州牛肉面店のように、オーダー後の手打ち麺。「ラグマンの具違い」のような麺が手軽に食べられるのでうれしい。

この手打ち麺たまんないよね

わたしは細麺好きなので、基本的にそういうのばっかり食べてしまうのだけど、ときどき刀削麺系の太麺も食べる。ああいうもちもちもやはりおいしい。

簡素! そしてこの量!(好き)
こういうのがパッと食べられるお店が日本にもあったらなー

もちもちで言えば、時折はさむ水餃子もまたいいのです(ほんと中国料理最強だな)。

この「粉練りましたあ!」な皮がいい
料理家のウー・ウェンさんも餃子は餡ではなく皮を食べるお料理と言っていた

情報の少ないわたしの旅の本とエッセイですが、きょうは一軒おすすめを。四川省成都にある担々麺のお店「永記湯圓面館」。名前を検索すれば日本語で情報が出てくる程度にはおいしいと知られているお店。担々麺はわたしが食べた中ではこのお店のものがいちばんおいしかった。湯圓もおいしい。

見た目でおいしさが伝わらないすごみ
もちもちでおいしかったー

中国ラーメン博物館みたいなの、できないかなあ。こういう質素で愛想のない(だけどおいしい)麺が程よいサイズと価格で食べたれる店舗がじゃららー!と入ったやつ。いまは池袋とか行けばいいのかな?

書籍『旅をひとさじ—てくてくラーハ日記—』書影

選りすぐりの写真とエッセイを収録!

書籍『旅をひとさじ—てくてくラーハ日記—』松本智秋 著

A5判並製・コデックス装・フルカラー・144頁
定価:本体1800円+税

書籍紹介へ