民泊ならではの時間
ダッカで一泊したお家の英語ペラな息子(以下:J)と話す。わたしの英語は、中学生で習った単語を並べて話すレベル。Jはそんなわたしに合わせてゆっくり聞き、しっかり話してくれる。ありがたい。
Jは政治の話は嫌いと言う。「ここでいろいろ話したってバングラデシュは変わらないし、このままだよ」と皮肉めいた笑みを浮かべてそう話す。バングラデシュの政治に諦めがあるみたい。「そっかー。まあなあ」と相槌を打ちつつ、政治に何を望むのか聞くとJは「経済」と即答した。
こういう話になったのは、Jが好奇心の赴くまま旅ができる人たちをうらやましく思っているという話からだった。バングラデシュでいくら働いたって、そうそうそんな生活はできないと。わたしより勤勉で、頭もよくって、英語も自在に話せて、なんだか肩身が狭くなる。つくづく平等でないと思う。
「Jがイヤじゃなければ、どうやったらその生活に近づけるか一緒に考えてみようよ」と提案すると、意外にも「お、いいね」という反応だった。それでいろいろ話すのだけど、斬新な案は出ず、結局「民泊がんばって外貨(米ドル)を稼ぐ」というありきたりな道に行き着く。
「やっぱり外貨が手っ取り早いよねえ」「LCC使おうよ」「ダッカAir Asia就航してるしね」「インドは?」「バンコクがいい」「あーバンコクいいね」
そんなことを話していると、お父さんがドア越しに覗いてきた。
Jは「ごめん、無視していいよ」と苦笑い。ほどなくして次はおばさんが来る。
わたしが部屋に戻ると、お母さんとおばさんが来る。
ぜんぜんほっといてくれない(笑)
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帰国後、AirbnbにJからわたし宛てにレビューが投稿された。
A true food addict!
一泊の滞在でわたしをこのように解釈したJはできる男。Jが好奇心の赴くまま旅できる日が、近い将来にやってきたらいいなと思う。それがたとえたった一日でも。じぶんの意志や願いを現実化することができたって体験がその人に及ぼすもの、その大きさってはかりしれないと思う。そしてFood Addict(わたし)は、Jならやれると思ったのだよ。
実現したあかつきには、また一緒にいろいろ話したいね。