旅のエッセイ

3月は出版記念と称したイベントがふたつあり、ラジオのコメント出演も決まった(順次「お知らせ」にアップしていきます)。ほんとなら「よぅし!」と腕まくりして意気揚々と準備するところ。だけど、もんもんもやもや。世界がじりじりと拘縮していくように感じている。あらためて「旅をする/旅ができる」ことがいかに最高で平和かを思い知る。

まあそんなわたし個人のモヤなどさておき、しっかりとイベント開催に取り組んでいかなければ。まん防延長期間にはなってしまうけれど、ぜひ参加をご検討いただきたいと思っている。どうぞよしなに。

旅の本屋のまどさんからオファーをいただいたときは、わあああああと高ぶった。かつてバックパックを背負い旅をしていた人たちなら、この高ぶりお察しいただけるかと思う笑。ひとり旅のたのしさを知り、とはいえまだまだペーペーだった頃。どこかの旅先の宿で「旅に特化した本屋さんが東京にあるよ」と聞いた。当時はそこまでネットも普及していなかったし、旅のガイドは本が主流。東京はなんでもあっていいなあ、と当時大阪に住んでいたわたしはとても羨ましく思ったのでした。

いまでも部屋に飾っている、ネパールのパタンで撮ったこの写真。身長149cmのわたしの隣に写るおばあちゃんは、身長差からもわかるように、とーっても小さい人だった。

このおばあちゃんとはカトマンズからパタンへ向かうバスで一緒になり、その道中、カタコト英語を交えながらお互い身振り手振りできゃっきゃ話した。すると、もうすぐパタンに到着って頃におばあちゃんから「パタンに着いたら一緒にカフェに行こう」と誘われた。

それで、パタンに着いてからふたりで手をつないでカフェに行くんだけども、わたしはてっきりチャイを飲むのかと思っていたら、おばあちゃんは店員さんに向かって大きな声で「Hey! Two coke please!」と言ってずっこけた。元気なおばあちゃんだなとは思っていたけど、まさかの炭酸飲料注文かつ同じネパールの人に対してHey!てものおっかしくて大笑い。コーラ好きなの?と聞くと、おばあちゃんは「I love coke!」とケタケタ笑っていた。

わたし、一度だけしか会っていないこのおばあちゃんのことが今でも大好きで。好奇心旺盛で、外国から来たわたしに興味津々で、やさしくって、open-heartedってこういうことかあ〜と思ったし、こんなおばあちゃんになりたいなあとも思った。身体は小さくても、こころは寛大。そうありたいと思った28歳の冬。だからこの写真をずっと飾っている。わたしのこころが縮まないように。

のまどさんのイベントはオンライン配信もあります。コロナでちょっと……という方はどうぞご検討ください。とは別に、おばあちゃんがコーラを飲んでる写真が見当たらない。すっごくいい写真なんだけど、どこやったかなあ?(最近こんなんばっかし)

書籍『旅をひとさじ—てくてくラーハ日記—』書影

選りすぐりの写真とエッセイを収録!

書籍『旅をひとさじ—てくてくラーハ日記—』松本智秋 著

A5判並製・コデックス装・フルカラー・144頁
定価:本体1800円+税

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