旅のエッセイ

おいしかった旅のごはんや、たのしかった旅の話を書こう書こうとするのだけど、結局書けないままPCをパタンと閉じてもんもんとしながら寝てしまう。『旅をひとさじ』レバノンの章(P.97)に登場するシリアの青年。日記にメモしていた彼が話してくれたことのなかに、

「自分が選べる道はひとつしかなかった。人を殺して生きていくより、土地をかえて自分の人生を生きたい」

というのがある。きょう、軍事評論家の小泉悠先生がテレビで言っていた「ロシアの侵攻を許してしまった時点でハッピーな結末はない。バッドエンドの中からどのバッドエンドを選ぶかという選択にしかならない」が重たく残る。

2018年末に訪れたシリアでは、街のあちこちにアサド大統領の肖像画が飾られていて、ろくでもなかった。数日前にアサド大統領がロシアのウクライナ侵攻を評価するというニュースを見て、わかってはいたけど腹が立って仕方がない。そしてとてつもなく虚しい。「ふつうに平和に暮らしたい」という思いが、どうしてこんなにもたやすく踏みにじられ、奪われてしまうんだろう。

シリアの旅を思い返すと、
わたしの苛立ちや虚しさを語ることさえもお粗末だと思えてくる

せっかく開設したサイト。くだらないこと、ちょっとした街の様子や遭遇した出来事。書きたいことはたくさんある。さあ、気を取り直して……!と、毎日思ってる。思ってるんだけど。

書籍『旅をひとさじ—てくてくラーハ日記—』書影

選りすぐりの写真とエッセイを収録!

書籍『旅をひとさじ—てくてくラーハ日記—』松本智秋 著

A5判並製・コデックス装・フルカラー・144頁
定価:本体1800円+税

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